オーツカ
みなさん「ルートビア」という商品を聞いたことがあるでしょうか。
ルートビアは、沖縄のご当地ドリンクとして有名なノンアルコール飲料です。
このルートビア、ただのご当地飲料だと思ったら大間違い。アメリカのノンアルコールドリンク史を変えた、由緒ある飲み物なのです。
今回はクラフトドリンクが持つ魅力がたっぷりつまったルートビアの世界を、少しのぞいてみましょう~
コンテンツ
ルートビアの歴史
ルートビアはアメリカ生まれのノンアルコール飲料。通販を別にすると、日本では基本的に沖縄でしか飲むことができません。
なぜ沖縄でしか飲めないのかというと、ルートビアを売っている「A&W」の店舗が沖縄にしかないからです。
「A&W」はアメリカ発祥のファーストフード店であり、沖縄は日本で唯一「A&W」の店舗がある県なのです。
ルートビアを英語で書くとRoot Beer。
Rootは「根」、Beerは「ビール」の意味。ビールと名の付くとおり、グラスに注いだ姿はまさに「黒ビール」といったビジュアルです。
ただし原料はビールとは全く異なり、ハーブやスパイスといったボタニカルエキスが中心。具体的には、以下のハーブ・スパイスを用いることが多いです。
- サルサパリラ
- サッサフラス
- アニス
- バニラ
- シナモン
- タンポポ
- ジンジャー
- ホップ
- ジュニパーベリー
- リコリ
- ワイルドチェリー
- マシュマロウ
- ウインターグリーン
日本ではあまりメジャーではないですが、アメリカでは今でも一般的な炭酸ドリンクとして親しまれています。
いくつものメーカーがルートビアを販売しており、各社それぞれのレシピで味に個性を出しています。
気になるお味ですが、一言で言うと「個性的」。
別の何かにたとえるなら、次のような言われ方をすることが多いようです。
- バニラ味のする湿布(しっぷ)
- 歯磨き粉
- 外国のガムの味
販売しているA&Wのホームページにすら「好き嫌いがとてもハッキリする」 味と書かれており、なかなか思い切った売り文句ですな。
が、好きな人にとっては堪らない味なのが「ルートビア」の面白いところ。
中には自作ルートビアを楽しんだり、海外のルートビアを飲み比べレビューする人も。はまる人はとことんはまってしまう魅力を持っているのです。
アメリカの歴史とともに歩んできたノンアルコールドリンク「ルートビア」
ルートビアのルーツは諸説ありますが、ネイティブアメリカンにあるというのが有力。
ネイティブアメリカンが料理などの香り付けに使用していた「サッサフラス」という樹の根。これを煮詰めて造られたドリンクが「ルートビア」の原型だと言われています。そのころのルートビアは「薬」の意味合いが強い飲み物でした。
ネイティブアメリカンの文化はアメリカに進出してきた西洋人にも広まり、多くの家庭で「ルートビア」的な薬膳ドリンクが飲まれていたと言います。
ちなみにこのルートビアを「商品」として広めたのは、チャールズ・エルマー・ハイヤーというアメリカ人。
1800年代後半にハイヤーが、ルートビアの「レシピ」を初めて公表。「ハイヤーズ・ルートビア」として販売を開始しました。
そして、ルートビア史の転換期となる1920年「禁酒法」の時代が訪れます。
ビールを飲みたくても飲めない人のための代用品として、アメリカ全土でルートビアが大流行。この時代に、今でもアメリカにあるルートビアメーカーがいくつも誕生することになりました。
沖縄で飲めるルートビアは「A&W」のものだと解説しましたが、A&Wも禁酒法の時代に独自のルートビアレシピで成功したブランドのひとつです。
アルコールの代わりになる「ノンアルコールドリンク」として、アメリカ国民に必要とされたルートビア。
つまりルートビアは「現在のノンアルコール飲料の先駆け的な存在」だと言うことができるのです。
A&W以外にも!様々なルートビアの種類
先ほど「アメリカにはたくさんのルートビアブランドがある」と説明しました。
アメリカで代表的なルートビアブランドは「A&W」と「DAD’S」。日本でも、通販サイトなどで双方手に入れることが可能です。
2大ブランド以外にも、大小様々なメーカーが独自のルートビアを製造しています。以下にいくつか紹介します。
- MUG ROOT BEER・・・「A&W」と「DAD’S」と並んで、アメリカで有名なルートビア。クセが比較的少なく、ドライで飲みやすい
- SARANAC・・・禁酒法以前からビール醸造所だったメーカーが造るルートビア。バニラとリコリスの香りが特徴
- KUTZTOWN SODA WORKS・・・100年以上の歴史あるクラフトルートビアメーカー。サトウキビ糖のコクのある甘みが特徴
クラフトルートビアとして、こだわりの原料を使って造られているものも数多くあります。もしもアメリカに行った際は、ルートビアの飲み比べをしてみるのも楽しいかもしれません。
クラフトドリンクとしてのルートビア ノンアルコールドリンクの新しい形
ルートビアは歴史あるノンアルコールドリンクにもかかわらず、現在でもアメリカ中で幅広い年代に親しまれています。
ルートビアが歴史や世代を超えて愛されているのには、以下の理由が考えられます。
- 複数のスパイス・ハーブをブレンドすることで生まれる味の奥深さ
- 原料のこだわりが、味にダイレクトに反映する面白さ
- 「禁酒法」という歴史的背景により、アメリカのクラフトドリンク市場に競争が生まれたこと
原料にこだわり、各社それぞれの個性を飲み物で表現する。このことは、ブリュワリーやワイナリーなどが行っている「酒造り」と共通しています。
ノンアルコール飲料は決して「アルコールより劣っているもの」ではなく、アルコール飲料と同等に質や個性を表現できるもの。上質なクラフトノンアルコールドリンクを飲めば、アルコールを楽しむのと同じように「原料や個性を感じる体験」ができるのです。
日本のクラフトノンアルコールは、アメリカと比較してまだまだ発展途上。しかし市場は確実に拡大を続けており、ノンアルコールの消費は10年前と比較して倍以上 になりました。
とはいえルートビア文化はまだまだ日本には浸透していません。しかしレベルの高いクラフトノンアルコールドリンクが広まっていけば、ルートビアに対する評価も上がっていくかもしれません。
オーツカ
日本でクラフトルートビアが購入できるのは、イベント限定の専門店「THE ROOT BEER JOURNEY」など限られているようです 。
実店舗が無いためタイミング次第にはなりますが、目にする機会があればぜひ飲んでみましょう~。