ノンアルコールなのに酔うのはプラシーボ効果か?「空酔い」の理由

オーツカ

飲酒をすると、お酒に含まれているアルコール成分によって気分が高揚します。いわゆる「酔う」状態です。

たまに「ノンアルコール飲料なのに酔っぱらった!」という人を見かけるのですが、これはなぜなのでしょうか?

ノンアルコール飲料も種類によってはアルコール成分をはごくわずかに含むものもあります。といっても酔うほどではないような、、、。

今回はノンアルコールで酔う原因と言われてる、空酔いやプラシーボ効果について解説していきましょう。

 

ノンアルコールで酔うって本当?

ノンアルコール飲料の定義はアルコール成分1%未満です。多くても0.9%、少ないものだと0.005%以下になります。

 

お酒を飲んでほろ酔いに達する分量は、体質にもよりますが純アルコール量で20~25g程度とされています。ちなみにこの分量は、厚生労働省が1日あたりのアルコール摂取量の適正と定めている量です。

 

アルコール成分が0.9%のノンアルコール飲料で純アルコール摂取量25gに到達するには、約2,780mlも飲まなければいけません。

350ml缶の飲料で約8缶分、アルコール成分0.005%の飲料なら一体何缶分になってしまうのか…。

 

つまり、ノンアルコール飲料で酔うことは到底難しく、相当お酒に弱い人でないと不可能です(アルコール成分0.9%の飲料の場合)。

しかし実際に、ノンアルコール飲料で酔う人達が存在します。

 

なぜ、ノンアルコール飲料で酔うのか?

ノンアルコール飲料を飲んで酔うことを「空酔い」と言います。

そしてその原因になっているのが「プラシーボ効果(プラセボ効果)」です。簡単に言えば、思い込みによる現象となります。

 

全日本民医連によると、プラシーボ効果は「本来は薬としての効果を持たない物質によって、得られる効果のこと」だそうです。ある実験では、偽薬を飲ませた人の30%が鎮痛効果を認めたという報告もあります。

出典:くすりの話 プラシーボ効果とは 全日本民医連

 

プラシーボ効果だけを狙って偽薬を販売する製薬会社もあるそうなので、思い込みで酔ってしまうのも何となく頷けます。

 

プラシーボ効果を実証した実験の数々

プラシーボ効果は主に医療現場で認められている効果で、さまざまな実験が行われています。ここでその一例をご紹介しましょう。

実験1:「高い薬の方がよく効く」という思い込み

アメリカで行われた実験で、被験者に軽い電気ショックを与えて皮膚に痛みを生じさせます。その後、被験者を2つのグループに分けて、それぞれに痛みを和らげる薬を投与しました。

 

グループAは「1錠あたり1セントの薬」と説明したものを、グループBには「1錠あたり2ドル以上する薬」と説明したものを与えます。

 

その結果、グループBの被験者の方が痛みが軽減効果が大きいと感じたことが分かりました。実は、グループA・Bに与えた薬はどちらも同じ偽薬で、痛みを軽減するような成分は皆無。

にもかかわらず、どちらのグループも一定の軽減効果を感じ、グループBに至ってはより高い軽減効果を感じたのです。

 

実験2:ウソの手術でウソのように回復

椎弓形成術(ついきょうけいせいじゅつ)は、脊髄への圧迫を和らげて脊柱管狭窄症を治療する外科手術です。これが必要な患者の中から、コンピューターがランダムで通常の手術とウソの手術を行う患者を選び、実施しました。

 

ウソの手術では、医師や看護師が患者に声をかけながら実際に手術をしているような演技をしてやり過ごします。手術後、ウソの手術を施された患者は、通常の手術を受けた患者と変わらないほどの回復を見せたそうです。

これもプラシーボ効果によるものだとされています。

 

実験3:プラシーボ効果が認められるようになった

麻酔科医のヘンリー・K・ビーチャーは、1955年にプラシーボ効果を認める論文を発表します。彼は1,082人の患者で調査し、全ての人に同じ偽薬を投与しました。

 

患者は手術後の痛み、せき、狭心症の痛み、頭痛、不安と緊張、一般的な風邪など様々な症状を抱えていて、そのうち約35%の人が症状の回復を認めたそうです。この論文をきっかけに、世界中でプラシーボ効果が議論されることになります。

本当に人体ってすごいですね。思い込みで治っちゃうんだから。

一部のノンアルコール飲料は本当に酔う

ノンアルコール飲料を飲んで空酔いする人は、思い込みが強くプラシーボ効果が働いていると考えられます。近年のノンアルコール飲料は味が本物のお酒に限りなく近づいており、ノンアルコールビールやノンアルコールスパークリングワイン(ノンアルシャンパン)に至っては言われなければ気づかないほどです。

普段から思い込みが激しい人は、ノンアルコール飲料と分かっていてもプラシーボ効果によって空酔いする可能性があります。もっとも、空酔いで泥酔するなどの話は聞いたことがないので、心配する必要はないでしょう。

 

しかしながら、一部のノンアルコール飲料は本当に酔う可能性があります。前述のようにノンアルコール飲料の定義はアルコール成分1%未満なので、0.9%のアルコールが含まれる飲料もあります。アルコール耐性が弱い人の場合、そうしたノンアルコール飲料を数缶飲んだだけで酔う可能性も考えられるので、十分に注意してください。

 

また、プラシーボ効果が強すぎてマイナス影響が生まれる「ノーシーボ効果」についても触れておきます。例えばプラシーボ効果によって空酔いし、気持ち悪くなったり頭痛がしたりしてしまうと、それはノーシーボ効果と呼ばれるマイナス影響が働いている状態になります。

あまりに思い込みが強い人はノーシーボ効果に転じることがあるかもしれないので、一応注意してください。

 

通常は酔わないし、運転もOKなのがノンアルコール飲料

プラシーボ効果で酔う人は稀なので、ほとんどの人はノンアルコール飲料を飲んでも何ともありません。もちろん、アルコール成分がゼロに近いので飲んだ後に運転してもOKです。

 

ただし、アルコール成分0.9%の飲料は数缶で飲酒基準値に達するので、0.1~0.9%の飲料を飲んだら運転は控えましょう。

オーツカ

最近ではYouTubeなどでプラシーボ効果を実験する動画も多数アップされているので、1つのコンテンツとして楽しんでみるのもありですね。以上、ノンアルコール飲料と空酔い、そしてプラシーボ効果について解説でした~。