オーツカ
お酒の味をじっくりと噛みしめながら晩酌した最後の記憶はいつでしょうか?
「そんな経験はない」という人もいるかもしれません。
マインドフル(心いっぱいに)ドリンキング(飲み物を楽しむ)--
マインドフルドリンキングは、イギリスを中心に広まった新しいお酒の飲み方です。
認知行動療法におけるマインドフルネスとも関係があるこの飲み方について探っていきます。
コンテンツ
“飲むこと”で集中力が高まるマインドフルドリンキング
マインドフルは「心をいっぱいにする」ことを意味します。
認知行動療法におけるマインドフルネスは、自分が今感じている1つひとつの感覚に集中することで、雑念を取り払いストレスから解放されるための手法です。ちなみに認知行動療法とは、うつ病や不安障害(パニック、社交不安、心的外傷後ストレスなど)、不眠症など多くの精神疾患に効果があるとされる療法で、ストレス過多な現代社会における新しい治療法として注目が高まっています。
何気なく行なっている呼吸。指先の感覚。皮膚が空気に触れる感覚。
全身のあらゆる感覚に意識を向けると、自然と雑念が取り払われます。その瞬間、人はストレスから解放されて、日々や将来に対する不安を感じずに済むという仕組みです。
瞬間的であっても、心に負担がない状態を作り出すことが、ストレス解消に効果的ということですね。
マインドフルネスは日本の禅をベースにしており、世界的企業であるGoogle社でも集中力を高める手法として取り入れられています。禅と瞑想との違いは、個人的に次のようなものだと考えています。
- 禅 = とにかく心を無にして煩悩を取り払い、心をコントロールしやすくする
- 瞑想 = 深い呼吸を繰り返しながらそこに意識を向けて、頭をスッキリさせる
- マインドフルネス = 日常の行動の中で細かいところに意識を向けてストレスを感じにくくする
しかし、これとお酒とどう関係するのでしょうか?
お酒を飲んで心をいっぱいにする。なんだかよくわかりませんね。
マインドフルドリンキングのやり方
【マインドフルドリンキング】は、簡単に言うと【飲む】というひとつの行為、そして感覚に集中しながらお酒を楽しむということです。
例えば缶ビールを飲む場合、まずはじっくり香りを楽しみましょう。
できれば缶からグラスに注ぎ、香りを立てたほうがよいです。色もわかりやすいですし、効果が高まります。
次に、ビールをゆっくりと口に含んでください。多からず少なからず、舌の上に収まる程度の量が良いでしょう。そして下の先端から中央に伝わる風味をじっくり感じてください。麦芽とホップ、それらが織りなす芳醇な香りが鼻を抜ける感覚に意識を向けることも大切です。
さらに、ビールが作った自然の炭酸が舌の上で弾ける感覚も楽しんでください。口の中で温くなったビールはまた違った味がします。焦らず、飲み込んで喉を通る感覚に意識を向け、食道を通って胃の中に収まるまで意識を途絶えさせないでください。飲み込んだ後に帰ってくる口中香(戻り香)も感じましょう。
この工程を数回繰り返すうちに、「飲む」という行動だけに意識が向けられ、その瞬間は不安や緊張などのストレスを感じていないことに気付くでしょう。
とにかくゆっくり、楽しみながら味わうことが大切です。
マインドフルドリンキングを意識するメリット
マインドフルドリンキングでお酒を飲むことを習慣化すると、思いもよらぬメリットが舞い降りてきます。
メリット①:スローペースでお酒が飲めるようになる
マインドフルドリンキングでお酒を飲むと、飲酒ペースは自然とゆっくりになります。
急激なアルコール摂取は血中のアルコール濃度を上げ、急性アルコール中毒などを引き起こします。また、酔いが回りやすくなるのも難点です。
お酒を飲むペースがゆっくりになると、酔いにくくなるだけでなく、肝臓への負担を軽減できます。飲酒量が減り、アルコールの摂取量も少なくなるからです。
健康的な飲酒生活を送るには飲酒ペースをコントロールすることは非常に重要です。
メリット②:味覚が敏感になり健康的な食事を意識できる
思わぬメリットは、味覚が敏感になることです。
マインドフルドリンキングでの飲酒を心掛けると、他の飲み物や食事の際に、自然とマインドフルが習慣になります。次第に味覚が研ぎ澄まされ、これを極めると添加物の有無も分かるようになるそうです。
薄い味を好むようになり、添加物の味を雑味に感じるようになるので自然と健康的な食事を意識できます。素材の美味しさが感じられるようになれば、食事がもっと楽しくなり、日々が充実していくはずです。
ノンアルコール飲料でマインドフルドリンキング
アルコールが回って楽しい気分になると、ついついマインドフルドリンキングを忘れてハイペースに飲みがちです。
つまりマインドフルドリンキングできなくなってきたら、それはお酒のやめ時。酔っぱらってきた証拠なのです。このようにいち早く自分の酩酊状態を確認することもできるので、非常に有用な飲み方とも言えます。
マインドフルドリンキングはお酒でなくても実施できます。
むしろ、お酒はアルコール分があることで感覚が鈍くなるので、水やその他の飲料でマインドフルドリンキングを実施する人もいます。
「お酒の味が好き」という人はノンアルコール飲料でマインドフルドリンキングを練習してみてはいかがでしょうか?
一番のおすすめはノンアルコールスパークリングワインです。味わいはかなりスパークリングワインに近く、一切酔うことなくマインドフルドリンキングを実施できます。また、自然と休肝日を設けることになるので、マインドフルドリンキングに加えてより健康的な生活を送れるでしょう。
マインドフルドリンキングが人生を変えるかもしれない
禅や瞑想が人生を変えた、という声を聞くことがあります。かの有名なスティーブ・ジョブズも日本の禅を愛していたそうで、禅から生まれた「わびさび」の心は、今でもiPhoneの中に生きているようです。
日本を代表する脳科学者の茂木健一郎さんは、マインドフルネスで人生が変わったそうです。ならば、マインドフルドリンキングを意識して人生が変わる場合もあるかもしれません。
もしも皆さんが、人間関係や仕事、その他諸々の原因によって多大なストレスを感じているのならば、マインドフルドリンキングを実践してみてください。人生が変わるほどではなくても、マインドフルドリンキングを実践している時だけはストレスから解放され、心が軽くなるかもしれません。
少しでも心が軽くなれば、物事を前向きに考えられるようになり、それが良い結果を生み、また心が軽くなる…、という良いサイクルが生まれることを願っています。